「2050年に生き残れ!心に訴える写真館の未来」をテーマに開催
2025年2月27日(木)・28日(金)、東京・市ヶ谷の専門学校東京ビジュアルアーツアカデミーにて、協同組合日本写真館協会主催「プロフェッショナルフォトゼミナール EAST2025」が開催されました。天候にも恵まれ、春の訪れを感じさせる穏やかな気候の中、全国から多くの参加者が集まりました。
今回のゼミナールは、「2050年に生き残れ!心に訴える写真館の未来」をテーマに、7組の講師陣による多彩なセミナーを実施。開会式では、佐藤泰博理事長(当時)より、「近い未来を見据えた内容になっています。どのような写真館でありたいか、どのような写真が支持されるのかを考える機会にしてほしい」との挨拶があり、ゼミナールがスタートしました。
基調講演では、小川実氏が成長企業となるための戦略構築と実践の重要性を説き、続くセッションではアドビ株式会社の仲尾氏より、最新のAIを活用したレタッチ技術について紹介されました。また、第15回写真館大賞受賞の安部宣秀氏(安部写真館)は、卓越したポートレート撮影に欠かせないライティング手法を解説。今回のテーマでもある事業承継・親子経営の写真館による講演では、堀親子(フォトアトリエ アディ)は同一スタジオでの戦略的な役割分担とデータ活用について、濱田親子(スタジオフォトス)は別スタジオによる撮影スタイルの確立を目指す挑戦を、鷲津親子(株式会社ダブル・エディション)は障がいを個性と捉えた現場づくりとスタッフとの協働について紹介しました。
締めくくりのまとめセミナーでは、『明日を綴る写真館』の著者・あるた氏より、「お客様目線で見る、これからの写真館の在り方」について講演をいただき、参加者に新たな視点と希望を提示してくださいました。
2日間にわたり展開された本ゼミナールは、各講師の実践に裏打ちされた内容により、参加者それぞれが2050年に向けた未来像を描く貴重な時間となりました。写真館の可能性と希望が感じられるセミナーとして、多くの学びと勇気を得る機会となりました。
基調講演
2050年に生き残る中小企業になるためには?
税理士法人HOP代表 小川 実氏
今回、プロフォトゼミナールEAST2025基調講演を拝聴し、未来の写真館のあり方について考える貴重な機会となりました。基調講演では、企業や弊社のような小規模企業が今後どのような方向へ進むべきか、そのビジョンを描き、成長の仕組みを構築することの重要性を学びました。社会の変化が激しく、5年先、10年先を見通すことが難しい時代において、写真館経営者として必要な考え方を、小川実氏が順序立てて丁寧に解説してくださいました。
特に印象に残ったのは、小川氏が設立した「相続診断協会」の話です。家族の歴史や親の人生を聞くことで、親子の絆が深まり、相続を自然な形で考えるきっかけになるというお話は、写真館の役割とも通じるものがあると感じました。人生の節目で来店されるお客様に対しても提案できるサービスになるのではないかとも考えます。写真は単なる記録ではなく、家族のつながりを可視化し、未来へと思いを紡ぐ大切なツールであることを改めて認識しました。
また、「成長の仕組み=心の安定」という考え方にも共感しました。これが整うことで仕事への意欲が高まり、自己成長を通じて周囲にも良い影響を与えられることを実感しました。 最後に、経営者として理念やビジョンを明確に言語化し、それに共感する仲間と共に成長の仕組みを築くことが、企業が生き残る鍵となることを学びました。今回の講演を通じて、今後の経営の方向性をより明確に考えることができ、大変有意義な時間となりました。
報告:小原達郎
セミナー1
最新バージョンPhotoshopでのAI活用
アドビ(株)
今回受講したアドビのセミナーで、特に印象に残ったのはAIに関する話題でした。生成AIは、ものすごいスピードで私たちの生活に浸透しています。その急速な進化を目の当たりにし、「写真はこれからどうなっていくのか?」「写真館は大丈夫なのか?」と、さまざまなことを考えさせられました。
しかし、アドビの考え方は、「AIは人間の創造性に取って代わるものではなく、それを支援するツールである」というもので、その言葉に不安が和らぎました。AIはあくまで作業の効率化を助けるものであり、写真館ならではの「特別な一枚」を生み出すのは、やはり人の手によるものなのだと改めて実感しました。
これまで以上に写真と真摯に向き合うことはもちろん、AIを上手に活用しながら、より良い写真づくりを追求していきたいと思います。
報告:渋谷知宏
セミナー2
「情報武装」による写真館の「ミライ的経営」とは?
フォトアトリエ アディ 堀 光治氏 / 堀 怜央奈氏
堀親子の本気のセミナーでは、写真館業界の現状と未来についての鋭い分析がなされ、業界の存続と発展に向けた具体的な戦略が発表されました。
まず、堀氏は「写真館はこのままいくと消滅の可能性がある」と警鐘を鳴らしました。近年、写真業界は伝統芸能化しつつあり、従来のスタイルを続けるだけでは生き残ることが難しくなっています。そこで、「誰にもまねできない強みを持つこと」そして「新たな集客方法や経営戦略を取り入れ、新たな顧客層を獲得すること」が不可欠であると強調されました。
「情報武装」の具体例として、Googleトレンドを活用した市場調査や、マッチングサイトを利用したカメラマンの増加についても言及されました。特に、写真館はスタジオ撮影では優位性を持つものの、出張撮影ではマッチングサイトのカメラマンに後れを取っている現状があります。この差を埋めるためには、柔軟なサービス展開が求められます。
さらに、業界全体の業績悪化の要因として、従来のマーケティング手法の限界が指摘されました。その打開策として、「WEBマーケティングの積極的な活用」が不可欠であると述べられました。特に、「データのみの商品」の導入による顧客のニーズに応じた販売戦略を構築することが求められます。データのみの商品を購入した顧客に対し、その後アルバムや飾る商材をオプションとして提案することで、売上向上が期待できると説明されました。また、マッチングサイトのカメラマンに負けない自信があるからこそ、写真館は「データ販売」をしっかりと企てるべきだと強調されました。従来の写真館の強みを活かしつつ、新たな経営戦略を導入することで、業界全体の発展につなげることが可能となります。
今回のセミナーを通じて、写真業界の現状と課題、そして未来に向けた具体的なアクションプランが明確に示され、これを機に多くの写真館が新たな経営戦略を取り入れ、持続可能な発展を遂げることへの覚悟をセミナー受講者一同その想いを胸に進んでいく所存です。
報告:浅野尚崇
セミナー3
シンプルなライティングで人物を引き立てる
安部写真館 安部宣秀氏
安部講師の撮影する写真は日頃からよく拝見しており、お客様の表情や仕草をナチュラルに引き出して、しかも品よく画面構成されているのを魅力に感じております。
今回の講演テーマがライティングという事でしたが、その写真が生まれるのはやはり講師の話口調や人との関わり方で場の空気を作り上げていく力の高さであることを感じ、その魅力に終始引き込まれっぱなしのセミナーでした。
『お客様の心に響くためには中身が大事。その中身はお客様との信頼関係の上で共同作業によって仕上がる』というお話がありました。それをより引き立てるためにライトをどう使うかがライティングの考え方ということを学びました。講演・実技ともに自然と笑みが出る展開で、スタジオでも同様の雰囲気作りをされていることがお客様に愛される理由だと感じました。
最後に『時代にあった心に響くいい写真を残し続けたい』とまとめてくださいました。AIには感情を表現できない。私もお客様の心に響く写真を提供し続けるよう『ひと』として感性を磨き続けていきます。
報告:大西真人
セミナー4
親子で取り組む伝統と革新
スタジオフォトス 濱田 剛氏 / 濱田恭輔氏
濱田さん親子のお話を通じて、事業承継が単なるビジネスの引き継ぎにとどまらず、家族の絆に根ざした重要なプロセスであることを改めて実感しました。特に、親子での事業継承に関するエピソードが印象深く、家族としての理解や協力がいかに大切であるかを感じました。
さらに、事業承継には親子間での信頼関係やコミュニケーションが不可欠だと感じました。子どもが自分で考え、親がその決断を支える場面が、より良い承継を実現するためには必要だと思います。時には親の経験や方法に頼ることも重要ですが、子どもが自分なりの視点を持ち、自由に試行錯誤できる環境も求められると感じました。
写真館という業態は、SNSの普及によって大きな変化を迎えています。その中で、時代に合わせたサービスやマーケティングを取り入れることが、事業の成長には欠かせない要素です。ただ、手法だけでなく、カメラマンとしての想いをブログで発信し続けることで、お客様との絆を深め、信頼を築くことができ、その中で込められた想いや情熱を伝えることの重要性を再認識しました。
撮影されている写真も家族の想いや感情がダイレクトに伝わる写真で、撮影された写真が、ただの瞬間を切り取ったものではなく、その背後にある家族の想いや感情を表現した素晴らしい作品でした。
濱田さん親子の人間関係の深さを学び、それを次に活かしていくことの重要性を改めて感じました。
報告:渡辺和志
セミナー5
障がいを持つ息子と親父の奮闘記 障がいは個性
(株)ダブル・エディション 鷲津敬之氏 / 鷲津勇希氏
今回は、鷲津敬之氏と息子・勇希氏による初の親子セミナーで、経営者としてではなく一人の親としての姿が語られました。ADHDという特性を持つ勇希氏との日々の関わりが、敬之氏本人や会社であるW.Editionの変化につながったことが大きなテーマでした。
特に「見て覚える」文化を見直し、撮影技術をレシピ化するなど、誰もが理解しやすい明文化を進めた結果、社員全員が成長できる職場環境が整備されました。また、学校撮影のロケハンや社内外の情報共有にも取り組み、より良いクリエイティブな現場づくりを目指しています。
セミナーでは、逆光を活かした部活動写真のデモ撮影も行われ、作品性の高いアプローチが披露されました。さらに、地元学校での講演を通じて地域とのつながりも強化。社員一人ひとりのモチベーション向上を重視し、「好きなことのために働く」意識を大切にしている姿勢が紹介されました。全体を通じて、相手の立場に立った配慮や行動が信頼を生み出し、社員・顧客・地域との関係性を深めていることが実感できる内容でした。
報告:氏井彩登
セミナー6
明日を綴る写真館
~漫画で描いた写真館の魅力~
漫画家 あるた梨沙氏
全国で公開された映画「明日を綴る写真館」の原作者、あるた梨沙さんとKADOKAWAの担当編集長、宮内さんのお話を聞かせていただきました。
2019年にこのコミック本が出版されましたが、その頃、ある方から「伊東さんにピッタリな漫画が売ってますよ!」と教えていただき早速購入!ビックリするほど写真館の内情が理解されたうえに、我々の思いをそのまま表現してくれている内容で読んでいて自然と涙が溢れました。業界の仲間たちや事務局にも知らせて、こんなお話が映画やドラマになって全国の人々に写真館の素晴らしさを知ってもらえたらどれだけ素敵だろう。とそんな話をした事を覚えています。
それから5年が経った昨年2024年、な・な・な・なんと!この漫画が映画になったではありませんか!!ビックリして、自分の事のように嬉しくてなんとも言えない感動が胸に込み上げました。
セミナーでは漫画の構想から編集長とのやりとり、そして映画になっていくまでのお話を詳しく聞かせていただいたり、制作中のたくさんの原画まで見せていただきましたが、時間を忘れるほど興味深いお話ばかりでした。紙ではなく電子書籍が主流になった今も、「私は紙の本の方が好き!」というあるたさん。われわれ写真業界とも共有できる話題もあり、終了後には会員たちからたくさんの質問が飛び交うセミナーでした。
この本のおかげで埋もれかかっていた「写真館」の名は、また地上に復活したような気がします。企画し、MCも務めてくださった氏井さん、本当に素晴らしいセミナーをありがとうございました。
報告:伊東一平
賛助会員コーナー
プロフェッショナルフォトゼミナール EAST2025 ご協力の御礼
このたび開催された「プロフェッショナルフォトゼミナール EAST2025」に際し、多くの賛助会員企業の皆様より、広告掲載ならびにブース出展というかたちで多大なるご協力を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
本ゼミナールにご協力いただきましたのは、以下の各社様です。
【広告・ブース出展】
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 様
ソニーマーケティング株式会社様
ダイコロ株式会社 様
株式会社ハッピースマイル 様
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 様
株式会社プロカラーラボ 様
株式会社ラボネットワーク 様
【ブース出展】
コメット株式会社 様
千株式会社 様
【広告協賛】
安達写真印刷株式会社 様
エプソン販売株式会社 様
株式会社ケイプロモーション 様
株式会社長野クリエイション 様
株式会社ニコンイメージングジャパン 様
会場内の賛助会員ブースでは、新製品の体験やサービス内容のご紹介、最新情報の提供、さらには業務に関する具体的な質問への対応など、活発なコミュニケーションが行われました。参加者にとっても貴重な情報交換の場となり、大変有意義な時間となりました。なお、本年度は写真業界最大の展示会「CP+」と日程が重なる中にもかかわらず、出展にご協力いただきましたことに、あらためて深く感謝申し上げます。
今後とも、協同組合日本写真館協会の活動への温かいご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
この記事の投稿者

- (協)日本写真館協会広報部による投稿です。代理投稿を含みます。
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